コラム
コラム - よだ形成外科クリニック【形成外科・美容外科・美容皮膚科 】
コラム
公開日:2022.04.22(金)
最近SNSで医学生や研修医の方々が、
「美容外科医になるにはどうしたらいいのか」、「どうしたら美容外科医として活躍できるか」という議論をしているのをよく見かけます。
「コストパフォーマンスに優れている診療科」だとか、「研修医が終了したらすぐ美容クリニックに就職するのが理にかなっている」など、短絡的な考えが多いように思いますが、誰もが認める美容外科医、患者さんの利益となれる美容外科医になることは、そう簡単ではありません。
どの診療科でも基礎がないと応用もこなすことができないのと同じです。
それでは、実際に「誰もが認める美容外科医」になるにはどうしたらいいのでしょうか?
医師の資格があれば、とりあえず「美容外科医」にはなることはできます。
自分で美容外科医と名乗ってしまえばいいのですから。
どの診療科でも同じです。それを周囲が認めてくれるかどうかは別ですけど。
※現在大学医学部や医科大学は、内科の学部や整形外科の学部があり、そこを卒業するという流れではなく、医学部を卒業した時点では、どの診療科でも選択できる状況にあります。
医師になるには、まず大学の医学部に入学する必要があります。
医学部は留年することがなければ6年間通います。
卒業する直前くらいに医師国家試験を受験し、合格すると医師になることができます。
医学部では、まず数学や外国語などの教養科目を学び、低学年で解剖学や生理学などの基礎医学を学んで実習を行います。
その後、内科学や産婦人科学などを学び、5〜6年生のときに大学病院で実習を受けます。
つまり、特定の科目を勉強するのではなく、医師に必要なことをまんべんなく学習していくのです。
医学部の勉強は知識や診断学が中心で、手術の手技を身につけたり、注射の技術を身につけることは学生時代にはありません。
また、美容外科に関する内容は、少なくとも私が医学生の時には全く学習する機会がありませんでした。
大学でほぼ学習することのない美容外科だから、卒業直後から美容外科を学んだ方がいいのでは?とお考えの方も多いと思います。
色々考えがあるのは存じていますが、美容外科は形成外科の一部なのです。
ですから形成外科を選択して、まずは形成外科医として治療や手術手技を身につけていくのが順当ではないかと思います。
形成外科の手術や技術の一つ一つは、美容外科の手術、技術の基本となります。
美容外科の難しいところは、正常な状態を手術や施術で変更していくことです。
私の例で言えば、現在の研修医制度とは異なりますが、卒業前に研修先の病院である東京警察病院形成外科の入局試験を受けて合格し、医師国家試験に無事合格。晴れて4月に入職をいたしました。
初めの約2年は研修として麻酔科と救急部で訓練を受け、そして形成外科医として訓練を受けました。
私の形成外科医としてのスタートは外傷の縫合です。
先輩方に美容外科を念頭に外傷も丁寧に行うよう指導されました。
美容外科はまず3〜4年目くらいにレーザー治療やキズ治しを行い、5〜6年目くらいで注入術を行いました。
顔面骨骨折、乳房再建、マイクロサージェリー、手の外科などの症例をこなし、7年目に形成外科専門医試験を受験して合格、本格的な美容外科手術はそこからのスタートとなりました。
美容外科医としてのセンスの問題もありますが、手術の一つ一つの技術は、紛れもなく形成外科の技術です。
この技術があれば、美容外科手術や施術もそれほど苦にはなりません。
未経験の美容外科分野も正しい流れが理解できれば、骨切り術など特殊な分野は別として、ほとんどこなすことができるのではないかと思います。
この形成外科技術が身についていてこそ、より美的に変化させることができる、本当の「美容外科医」になれるのだと思います。
形成外科がある大学や大きな病院でも、系統的に美容外科を身につけるプログラムはありません。
美容手術や施術を希望される方は、圧倒的にいわゆる大手美容外科に行かれるのが現状です。
なので卒業して初期研修を終えたら大手美容外科に入職する若い医師が多いのでしょう。
本来なら形成外科専門医試験に合格するまでは、形成外科医として頑張るのがいいのですが、ここで人生のコスパを考えてしまうのでしょうね。
しかしそれでは誰もが認める美容外科医にはなれないと思います。
だって基礎技術があやふやですから。
全く技術のない状態で大手美容外科に入職すると、駒として純粋培養されるのが関の山です。
形成外科を選択したら美容外科医になれるかも疑問なところがあります。
美容外科を否定する形成外科医局も存在します。
美容外科を真剣に考えている形成外科医局でないとなかなか美容外科には触れられないと思います。
東京警察病院形成外科は常に念頭に美容外科を置いている形成外科でした。
自分は非常にラッキーだったと思います。
日本美容外科学会という名称の団体が2つ存在しています。
1つは日本形成外科学会 https://jsprs.or.jp/ の正会員でないと日本美容外科学会正会員になれない団体。
英語表記は
(JSAPS=Japan Society of Aesthetic Plastic Surgery)
https://www.jsaps.com/
もう一つは形成外科正会員資格がなくても入会できる日本美容外科学会。
英語表記は
(JSAS=Japan Society of Aesthetic Surgery)
http://www.jsas.or.jp/
私は上記の「Plastic」が入っているJSAPSの正会員で美容外科専門医の資格を持っています。
https://www.jsaps.com/profile/specialist/
どちらが偉くてどちらが偉くないという話ではなく、JSAPSの正会員になるには日本形成外科学会の正会員にならないと入会できないというところが大変なのです。
まずどこかの形成外科の医局に所属し、2名の評議員の推薦が必要になるからです。
初期研修が終了して大手美容外科に入職してしまうと、その時点では日本形成外科学会に入会ができないので、JSAPSにも必然的に入会できません。よって、JSASの入会を持って美容外科医と名乗ることになります。
お暇なときに知っている先生がどの学会に所属しているか見てみてください。
もちろんJSAPSとJSASの両方に所属している先生方もいらっしゃいます。
美容外科を診療科として名乗れるようになったのは、形成外科を取り組んできた先人の先生方の賜物です。
「誰にも認められる美容外科医」になりたい医師は、切っても切れない形成外科−美容外科の関係や歴史も知っておくといいでしょう。
形成外科専門医を取るには、約7年という月日がかかり、長いと感じるかもしれませんが、美容外科医としての幅は大きく拡がることは間違いありません。
まずは形成外科医となることを強くお薦めします。