コラム
コラム - よだ形成外科クリニック【形成外科・美容外科・美容皮膚科 】
コラム
公開日:2020.10.23(金)
二重を検討するなかで、意外と問題となるのは眼の開き具合です。
眠そうに見える、アイプチが今ひとつ決まらない、額や眉毛を上げて目を開くなどの症状があるのに、眼の開き具合についての検討を行わないまま二重の手術を行ってしまうと、せっかくの二重整形手術が残念な結果となってしまうことがあるのでご注意ください。
最近では、“「あなたは眼瞼下垂です。眼瞼下垂の手術が必要です。」と他院で指摘されました。本当に眼瞼下垂なのですか?”といったご相談を受けることも多くなってきています。
眼瞼下垂とはどのような状態でどのような手術で解決していくかを、今回は説明していきたいと思います。
まず最初に一言。
眼瞼下垂は見た目で判断するものではありません!
眼瞼とはまぶたのことであり、下垂とは下がっているという意味です。
私たち形成外科専門医、美容外科専門医は、その眼瞼下垂が病的な状態なのか、それとも病的ではないものなのかを診断します。
病的かどうかは見た目で判断できることもありますが、一般的には、挙筋機能という「目が開くための筋肉」の状態、「まぶたを引き上げる腱膜」の状態などを診察してから眼瞼下垂かどうかを判断していきます。
まぶたが開くのは単純です。
① まず筋肉である眼瞼挙筋が縮みます。
② 次に筋肉がヒモである眼瞼挙筋腱膜を引っ張ります。
③ 腱膜が固い組織である瞼板及び睫毛を引き上げます。
この仕組みから、眼の開きに問題がある場合には次のようなことを考えていくことになります。
このケースはまれな眼瞼下垂です。
筋肉の発達が生まれながらに支障がある、あるいは眼瞼挙筋を支配する神経領域や血管領域に問題がある場合などです。
この場合は、筋肉そのものに支障があるため、治療は主に額の筋肉と挙筋腱膜などに筋膜やゴアテックスなどで繋げていく手術などが行われます。
このケースがいわゆる眼瞼下垂としてよく見かける状態です。
眼瞼挙筋によって引き上げられる眼瞼挙筋腱膜ですが、その力が伝わる瞼板との付着部分が何らかの原因で剥がれることがあります。
そうすると腱膜と瞼板の間がバネのようになってしまい、瞼板と睫毛を効率よく引き上げることができなくなります。このような状態を腱膜性眼瞼下垂と呼びます。
まぶたの開きが悪いというご相談の場合、1)、2)で説明した原因よりも、実際にはこちらの原因であることが多いのです。
どのようなことかというと…
まぶたには前面に皮膚がありますが、この皮膚に重みがあると、目が開きづらいという現象が生じるのです。
皮膚に重みが出る原因は下記のようなものがあります。
一重の方の場合
一重の方は二重の方のように皮膚が折られず、まぶたの重さが分散できないために二重の方に比べて眼の開きは悪くなります。
加齢による現象の場合
加齢によりまぶたの皮膚が下がってきたり、被さってきている場合です。
まぶたの重さが増すために眼の開きが悪くなってきます。
一重の方の場合、ブジー(細い針金でできていて、まぶたに当てて二重のラインを作り仕上がりイメージをみるもの)などで簡易的な二重を作成していくと、まぶたの開きが増していきます。
つまり一重のために眼の開きが悪いだけで、眼瞼挙筋や眼瞼挙筋腱膜には異常がないということを示しています。
このような場合は眼瞼下垂ではありません。
さらに皮膚が被ってきている場合は、被っている皮膚を同じくブジーなどで支えていくと眼の開きが増していきます。
同様にこのような場合も眼瞼下垂ではありません。
問題となるのは二重の方で皮膚の被りもないのに眼の開きが悪い、一重で簡易的な二重を作成しても眼の開きが悪い場合のケースなのです。
このようなケースの場合は挙筋腱膜になんらかの異常があることを示しているので、単に二重の修正や二重を作成しても眼の開きは解消されません。
病的な眼瞼下垂かどうかの基準は、以下のようにして判断します。
・一重の方…ブジーなどで簡易的な二重を作成してみる
・二重の方…適切な高さの二重の位置をブジーで支えた状態で測定してみる
上記のことを試してみて、睫毛と瞳がかかってくる場合は、病的な眼瞼下垂と判断していきます。
その判定は、眼瞼下垂に治療に当たっている形成外科学会認定専門医や美容外科学会(JSAPS)認定専門医に委ねるのがよろしいかと思います。
もう一度言いますが、眼瞼下垂は見た目だけで診断するものではありません。
病的なレベルの眼瞼下垂を起こす原因は、
・20年以上のハードコンタクトの使用期間のある方
・花粉症やアトピーなどで目を擦る方
が挙げられます。
軽度の眼瞼下垂の場合は、挙筋腱膜の修復手術を行うかどうかを、医師と詳細に打ち合わせをしてから治療方針を決定するのが良いと思います。
病的なレベルでも軽度の眼瞼下垂のレベルでも、挙筋腱膜のゆるみが原因の場合の手術方法はほぼ同じになります。
瞼板と挙筋腱膜との付着部分が外れて伸びてしまっていますので、この外れている状態を瞼板にもう一度縫着して固定をする手術を行います。
この手術を挙筋腱膜前転術といいます。
開瞼するのに適切な高さの二重幅を決定します。
二重の幅が広すぎると、挙筋腱膜前転術を行っても開瞼に支障を来すため、おすすめしていません。
手術は局所麻酔下で行います。
術中に開瞼していただき調節を行う必要があるため、笑気麻酔など意識を落としてしまう麻酔は使用していません。
挙筋腱膜に到達したら、しっかりと横走靱帯下で挙筋腱膜を剥離します。
瞼板から外れている挙筋腱膜をアスフレックス糸で縫着します。
この固定位置が極めて大事で、適切な位置に縫着しないとつり目の様な形の眼瞼の形態になるので、熟練の手術技術を要します。
適宜開瞼していただき挙筋腱膜の前転量を調節します。
全切開法と同等に二重になるように皮膚を固定して縫合していきます。
言葉で説明すると以上ですが、この手術は難易度が高く正確に行うのには熟練を要します。
挙筋腱膜の展開の仕方、固定の仕方は熟練した執刀医は独自の工夫をもって手術しています。
私も少しずつ改良しながら手術の精度を高めています。
抜糸が7日目、お化粧の目安は10日くらいです。
力を入れなくても開瞼できるのを感じるのは、術後約1ヶ月からで、左右差が整うのは4~6ヶ月です。
左右差や開瞼量不足に関しては、1年ほど経過をみて再手術を行うこともあります。
術前です。軽度の眼瞼下垂を認めました。挙筋腱膜前転術を行いました。
瞼板と挙筋腱膜がセッシの間の距離分外れていました。
適切な位置で瞼板-挙筋腱膜を前転固定しました。
手術直後です。
6ヶ月後です。開瞼良好です。
よだ形成外科クリニック院長
依田 拓之 院長
心から信頼できる
美容外科医療を目指して。
・日本形成外科学会認定専門医
・日本美容外科学会(JSAPS)認定専門医