コラム
コラム - よだ形成外科クリニック【形成外科・美容外科・美容皮膚科 】
コラム
公開日:2021.7.21(水)
頬の高まりは若さの象徴です。
この高まりは、メーラーファットパットをメインに、表情筋と皮膚に包まれた脂肪層で構成されています。
経年変化でメーラーファットパットそのものの重みと重力、表情筋の緩みなどにより徐々に下垂してきます。
同時に、骨組織も吸収されて顔面の高まりが少なくなり、面長な変形をきたすようになってきます。
顔面を髪の生え際-目、目-鼻下、鼻下-アゴ先と分割した場合、目-鼻下の領域は中顔面になります。
中顔面はたるみや下垂を矯正するのに有効な部位ですが、やや難しい領域です。
フェイスリフト手術のように、SMASという固定源があるわけではないので、お決まりの方法が少なく、どのような手術や施術が有効なのか、美容外科医師らでも議論が盛んです。
中顔面のたるみや下垂を矯正するための手術や施術は、以下の方法が考えられます。
①メーラーファットパットなど皮下組織を糸などで物理的に引き上げ固定する方法
②ゴルゴラインを解消させたりや頬骨に高まりを作成するためになんらかの注入物で膨らませる方法
③皮下組織にHIFU(ハイフ)などの熱源を使用して収縮させて引き上げる方法
などです。
今回は、①における当院の治療法「シルエットリフト」について説明いたします。
中顔面のメーラーファットパットなどの皮下組織は、顔面の中心部付近に存在するため、SMASの引き上げや皮下剥離では、中顔面の皮下組織を引き上げる効果が少ないです。
そこで考えられてきた方法は糸などで直接メーラーファットパットなどの皮下組織に通して引っかけて上方に引き上げ固定をするという方法です。
使用する糸や糸の細工は様々なものが考案されており、糸が固定されるのかされないのか、またその糸は吸収される糸なのか、吸収されない糸なのかといういくつかのパラメーターがあります。
・溶けない糸-固定点あり
・溶けない糸-固定点なし
・溶ける糸-固定点あり
・溶ける糸-固定点なし
という組み合わせで糸の種類があります。
私は以前「溶けない糸-固定点なし」の糸を使用していました。
APTOSという糸です。
この糸は持ち上げたい方向に糸を弯曲させながら入れる方法で、糸に毛羽立ちのある細工がされているものです。
なかなか良い糸だと評価していましたが、固定点がないタイプのため、まれに糸が刺入点から露出することがあり、口腔内から出てくることもあるという報告が見られるようになりました。
糸が踊るという現象です。
幸いに私は大きなトラブルはありませんでしたが、固定点のない糸を使用する機会が徐々に減ってしまい、現在は使用していません。
現在主流なのは、溶ける糸で固定点ありのタイプです。
溶けるという糸は、表現上受け入れやすいのではないかと思います。
しかし、実際には砂糖が水に溶けるがごとくすーっと溶けるものではありません。
まずは糸の負担のかかる部位が切れるのです。
中顔面の重い皮下組織を細い糸数本で持ち上げて固定しているのですから、切れてしまっては一時的効果しか見込めません。
となると、採用したい糸は、溶けない糸-固定点ありのタイプであり、これが最適ということになります。
このタイプの糸のメーカーによってはしこりが生じたり、感染を引き起こしたりする報告のある糸が存在しますが、私が採用している「シルエットリフト」の糸はかれこれ10年以上使用されていて、しかも感染を引き起こすという報告もほとんどありません。
安定した糸で、現在でもシルエットリフトを利用した学会発表や論文が投稿されます。
シルエットリフトには、シルエットリフトソフトという溶ける糸もありますが、私は溶けない糸を使用しています。
ポリプロピレンという血管縫合などに使用される糸を使用しているため、とても安定が良いのが特徴です。
糸には結び目が施されていて、結び目と結び目の間には可溶性のコーンと呼ばれる細工が施されています。
この細工が組織をしっかりと引っかけ、たるみを引き上げます。
糸の通過点をマーキングします。
局所麻酔を頭髪切開内、糸の貫通する所に行います。
頭髪内を切開して側頭筋深筋膜を同定します。
同部位よりシルエットリフト糸を法令線部-下顎角部に皮下脂肪内を通して貫通させます。
2本組みで筋膜上に引き上げながら固定します。
まず前頭側頭部に3-4cmの切開を行い、側頭深筋膜を露出します。
頭髪ない切開部から法令線部-下顎角部へ糸を通し、図のように2本組みで側頭筋膜に固定して引き上げます。
イメージとしては縦方向の強烈なポニーテールをする感じです。
糸の結び目と、コーンを皮下脂肪とメーラーファットパット内に通して引っかけて挙上固定していきます。
直線に糸を入れる方法と違い、糸がクロスしているので、絶妙なベクトルで皮下組織が挙上されて固定されます。
側頭筋膜に糸が固定されているため、優れた持続を有します。
手術時間は両側で90分くらいです。
5-7日ほど引きつり感は強めにでます。表情によって変な線が生じることもあります。
7日目頭髪内を抜糸します。内出血斑が生じた場合は10日ほど気になるかもしれません。
糸が馴染んで表情にも問題がなくなるのは2-4週ほどです。
上段左は術前、右は術前斜位です。
下段左は術後1週間後正面、右下は1週間後斜位です。
メーラーファットパットの挙上と、下顎のラインがきれいになりました。
中顔面の下垂したボリューム確実に引き上げ、固定する方法の1つとして溶けない糸-固定するタイプのシルエットリフトは大変有用な方法と言えるでしょう。
治療名 | シルエットリフト 8本使用 |
---|---|
治療内容 | ほうれい線と口角を若返らせたいという希望でシルエットリフトを行いました。 過去に他院でこめかみリフトを受けたが全く効果がなかったそうです。 |
リスク | 腫れ、引きつり感がしばらく続きます。 |
費用 | 360,000円 2010年8月現在 |
よだ形成外科クリニック院長
依田 拓之 院長
心から信頼できる
美容外科医療を目指して。
・日本形成外科学会認定専門医
・日本美容外科学会(JSAPS)認定専門医